基礎研究:文具店の店舗形態について


当研究所では、日頃のフィールドワークとして「文具探検」と称し、文具店の実地調査を進めている。 そのなかで、文具店の立地場所、店舗形態など、立地場所ゆえの特質性や環境依存度、特異性などを見ることができる。

ここでは、そのような文具店の店舗形態について取りまとめることにする。

      
・立地場所

  • 小・中学校付近

    文具店がもっとも多いところといえば、学校の付近。校門から半径 200m 近辺に必ずと言っていいほどあった。もしくは、「文具店」という看板ではないにしても、文具も扱っている駄菓子屋を兼ねた商店があった。
    しかし、最近の少子化やコンビニの普及、子供の文具に対する多様化などで、かなり減少している。主に、小学生を対象にしているため、高級文具である万年筆などを扱っていることはなく、逆に、それぞれの学校指定の雑貨(校章、鞄、上履きなど)を扱うなどの地域に密着した商品展開がなされている。
    実際に調査に伺っても、平日の夕方にもかかわらず、小学生が買いに来る場面に遭遇することは少なかった。

  • 駅前商店街、大通り商店街

    駅前の通りや役所付近の通りには、商店街があることが多い。その商店街の中に文具店も含まれていることが多い。このようなところに店舗を構えているところは、周辺の商店、企業、役所向けに事務用品を提供したり、通勤のサラリーマンや高校生などを対象にした商品を扱っている。そのため、万年筆などの高級(高額)文具があるのも、この立地場所に店舗を持つ文具店の特徴でもある。
    しかし、郊外型の大型店舗にお客が流れてしまい、駐車場を持たない商店街の店舗には、お客が少なくなっている。

  • ビル・デパートのテナント

    ビルやデパートのテナントとして入っている文具店は、比較的元気にみえる。が、テナント料がかかるため、それなりに収益がなければ、厳しいように見える。
    お客の入りは、入居しているビル、デパートに左右されることもあるが、商品の回転は比較的早く、古い商品は、返品されたり、早くに値引きされ、店頭在庫として、残っていることはない。
    また、郊外型スーパーのテナントの場合、顧客がファミリー層になるため、ファンシー系のバラエティー雑貨が主要商品となってしまう傾向もある。
    定期的な棚卸しが実施されているため、陳列棚は整理されており、「古い文具を探す」という目的には、あまり適していない。

  • 郊外

    駐車場を確保すべく、街の郊外に店舗を構える形態も増えてきている。書店兼用店舗などに多く見られる。
    店舗も大きくすることができるため、品数も豊富に扱えるようなる。

      
・店舗形態

  • 専門店、単体店

    「**文房具店」や「文具の**」、「***紙店」など、文具のみを取り扱っている店舗。
    専門店としては、東京銀座の「伊東屋」が、その典型。

  • セレクトショップ・雑貨店

    ショップのオーナーが選んだ文具や雑貨を扱うセレクトショップ・雑貨店。オーナーのセンスがお店の善し悪しになることから、厳選された商品のみが並んでいる。そのため、一般的な文具店とは異なる。

  • 兼務店舗(確認済み)

    当研究所が文具探検にて確認している文具店の兼務店舗である。

    • 書籍(書店)

      もっとも、一般的な兼務店舗。店名が「**書店」となっていることからも、主となっている業態が書店という場合が大半である。チェーン店もこの形式が多い。

    • 駄菓子

      書店との兼務の次に多いのが、駄菓子屋ではないだろうか?そもそも、駄菓子屋自体に小学校の近くにあって、そのついでに文具も扱っているというところも多い。そういえば、三菱鉛筆のペッカーは、この形態のお店で購入したのであった。

    • 玩具

      小学生がもっとも通うお店として、玩具店は有効な店舗形態であろう。その副業として文具を扱っているところもあった。また、地方によっては、自転車店まで兼ねているところもあった。

    • 化粧品

      旦那さんが文具店を取り仕切って、奥さんが化粧品を扱っている様な、個人経営の店舗で見られる。

    • 薬局

      化粧品店と同様の形態。薬局と化粧品店を兼ねた店舗に文具も扱うようになった場合もある。

    • 電器店

      昔、小学校への通学路の途中に、売り場面積の半分が文具で、残り半分が電化製品やレコードを扱っていたお店があった。どういった経緯で文具を扱うようになったのかは不明だが、店舗も広くて便利だった。

    • 手芸用品

      文具店として営んでいるお店では、奥さんが店番の場合が多い。その奥さんの趣味で手芸用品も扱い始めてしまったというところも多い。気がつくと、店舗面積の半分以上が手芸用品になっているところもある。

    • クリーニング取扱

      副業で始めたクリーニング取扱が、いろいろな理由から、文具が売れなくなって、今ではクリーニング取扱そのものが本業になっている場合がある。

    • 食料品(〜商店)

      いわゆる「**商店」として商売している店舗の中で、文具も扱っている場合がある。食料品と行っても、生鮮ではなく、調味料や海苔、小麦粉、カップラーメンやレトルト食品などと一緒に、文具も扱うお店がある。お店は、奥さんが仕切っているのだが、文具のことについて詳しい話を聞こうとすると、奥から旦那さんが登場するようなことが多かった。しかし、値段を負けてくれるのは奥さんの方だったりする。

    • 日用雑貨

      店名が「***金物店」にもかかわらず、店の看板に「文具」の文字があるお店を探検したことがある。話を伺うと、その地域で文具を扱うところがなかったので、小学校からお願いされて取り扱うようになったとのことであった。

    • 衣料品

      実際には、日用雑貨や食料品も含めた総合商店の形態の一つである。さる温泉地にある店舗がこの形態だった。

    • 家具・インテリアショップ

      たまたま通りかかった文具店のレシートに、「**家具文具店」と印字されていた。実際、家具売り場は隣の店舗になっていた。 どのようないきさつで、文具を扱うようになったのかは聞きそびれたが、事務用品としてスチールの机を扱う延長として、文具も扱うようになったのではないだろうか

    • 釣具店

      実は、未確認ではあるが、ある方が投稿した看板写真に、「文具・釣具」と書いてあった。


    兼務店舗で、もっとも組み合わせが多かったのは、書籍+薬局+化粧品+文具というのがあった。


  • 兼務店舗(未確認)

    まだ、未確認の兼務店舗を以下にあげる。

    • 花屋

      以前、当研究員が参加していた Nifty の「文具パラダイスフォーラム」の中で、報告があった兼務店舗。

      
所長 どら 

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Last Update : 2011/07/18

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